てっちゃんの写真館 

       スイス・チューリッヒ空港にて   アドレー・シルビアさん 24歳

たぶん、スイスに私が残っていたら、99%の確率で私と結婚していた女性ですね〜、
今も彼女の住所、連絡先は彼女自身の美しい筆跡・英字で残してあります、運命の出会い・・。
気分は「カサブランカ」・・、せつないね。


総合テレビ 夜9時の全国ニュース。 中央大学駿河台記念館(お茶の水)・講演  


トップ アイコントップページへもどる  次へ 
      
    てっちゃんの小説 「兜町ゼロ番地」
        (小説現代新人賞応募作品)

「この間、僕見てしまったんですよ・・」三浦は言葉を続けた。
「昼休みに、奥のフロアに入りかけたら、部長がたった一人で目を閉じてなにやら机の上に向かって
手を合わせていたでしょう。あの時は、独り椅子に座って何をやってるのだろうと不思議でしたよ。
で、翌朝に部長の机を掃除しながらよく見たら、あの自殺した税理士の吉田さんの名刺がデスクマットの
間に挟んであるのがビニール越しに目にとまったんです。僕はあの事件は部長には何の責任もないと
思っています。ええ、そりゃショックでしたけど・・」(中略)
 
 17年前のあの夜も、松坂はじっと考え続けていた。そう・・、真夜中の隅田川の流れはその動きを
じっと止めて、対岸のパルプ工場のランプのどろりとしたコールタールのようなぬめった反射光を、
松坂少年の木クズだらけで汗ばんだ顔に投げかけていた。
彼はドロドロのラワン材の山の上に、ヘドロにまみれたなっぱ服に身をかため鉛のような腰をおろして、
「ここが本当に東京なのだろうか・・・」と自問自答していた。東京ってこんなに暗いところだったのか。
少年の目からポツリと大粒の涙が落ちた。
10メートルばかり背後のベニヤ板工場の入り口からは、「ロータリー」(中型トラックくらいの大きさの黒い鋼鉄の塊りで、鉛筆削りのお化けのようなもの)の規則正しくラワン材を削る回転音とベルトコンベアーの機械的なカッター音が夜のしじまに蒸し暑くかすかに響いていた。(中略)

フランクフルトはそれほど活気のある街ではない。日本で言えば、北陸の金沢といったイメージで、
美しい歴史の悠久を感じさせる古都である。
ガンビーノ氏が予約しておいてくれたホテルは「エクセルシオール」、三ツ星印(1990年当時は最高級)のクラスではあるけれど、他の西欧各国の三ツ星印のホテルから見ると、入ってすぐ右のロビーからして
狭くて薄暗く、清潔ではあるけれどやや貧相な構えだった。(中略)
ハンブルグ空港からフランクフルト空港までのフライト所要時間は約30分余り、その機中で松坂は
この次に訪独の機会があれば是非ハンブルグに立ち寄りたいものだと考えていた。
大沢から彼に与えられた日数は5日間だけであった。ハンブルグとは天地の差だが、フランクフルトにも
セックスゾーンが1ヶ所だけある。
それはホテル・エクセルシオールから歩いて10分余りのカイザー通りにあった。
松坂がホテルにチェックインした時に、「日本人ですか?」と訊ねてきた現地駐在の日本商社員がいて、
その彼が教えてくれたプレイスポットだった。(中略)
兜町投資経済のフランクフルト進出はもう決まったことだからしかたがない。
日本で家庭を守ってくれている弥栄子に対する後ろめたさは多少あったが、割り切ることにした。(中略)
フランクフルトの人口は約30万だが、街の中心部はおよそ1日もかければ、足の丈夫な男なら徒歩で
見て回れなくもない、そんな広さだった。
街の中心を流れるのは、ライン河の支流のマイン川である。フランクフルトの市街を歩いてみるとよく
解るが、街のどこにいても眼下にマイン川を見ることが出来る。つまり、この街はマイン川の両岸に
丘のようにせり上がった形の地形になっている。石畳にはゴミひとつ落ちてはいない。
歩道には大きな犬を連れた少女や老婆たちが、少ない日照時間を惜しむかのように、さんさんごご
影を長く路上にひきずりながら、葉の落ちた街路樹の脇をゆっくりと歩を進めていた。
これはまるでレンブラントの油絵の世界だと松坂は思った。(後略)

                  「ガラスの風鈴」

凍てつく冬の朝、まだ煙草の匂いが強烈な奥の八畳洋間・・

娘が出て行った部屋の天井の明かり窓に、ポツンとひとつ・・
太陽光ですすけて、ほこりまみれのガラスの風鈴がぶら下がっている
一目でわかった・・、ひとりでに涙があふれてきた・・、
さみしかったんだ

わが子だもの、すべてわかり過ぎるくらいにわかる
なぐりたくて、なぐったんじゃない

風に揺れることもなく、ひっそりとぶらさがる風鈴を見上げるたびに
どうにも涙がとまらない

山茶花が散って、もうすぐ裏庭の小さな桜が咲くだろう
立ち直ってくれ・・
おまえには、その力があるはずだ

             「マンゾクしてる」

あいつがマンゾクしてるって言った
ん? ほんと?
ほんとさ、38年もいっしょに暮らしていつも不平たらたらだったアイツが
唐突に「マンゾクしてる」って言った
おれの66年余りの人生でいちばん聞きたかった言葉かもしれない
匹見峡温泉の帰り道
ハンドルを握りながら夕暮れの山の彼方をまっすぐ見つめて
念を押すように何度も「マンゾクしてる」ってアイツが言った
口もとをゆるめ、その目ははにかんでいた
そう、来月は初出版
こんどは、グチでもこぼすのかな

  「俵山から」(ワルツ調で)
畳が淵に秋が来る

ふたりでシートに身を沈めれば
あのこと このこと 浮かんでは消えてゆく
俵山の夜空を見上げています
きみはポツンと言った
ついにカウントダウンに入ったね
あと10年 20年 残りの人生 楽しもう
あの温泉も この温泉も行きたいな
過ぎ越し40数年 夢まぼろし
あの星はキミ この星はボク
100年後も この山を見下ろしている
小さな車内はあの世への箱舟さ
いつもどこかで語らい輝いているんだよ
ありがとう  ありがとう
ほら 小さな星が輝いている
ふたりで育てた子どもたちが笑ってる
若き乙女のくちびるに
あなたの昔のくちびるに
いつか別れを告げるのを

*俵山から 角島へ
灯台めぐれば 特牛(とっこい)港
海水浴場
*時はめぐりくる
俵山の空はるか
金子みすずの声がする
長門路の九十九(つづら)折り
角島灯台 見下ろせば
森の中から 鹿の親子の鳴く姿

*夜空にきらめく町の灯が
下関 関門海峡はるか
安徳天皇 赤間神宮
藤原よしえ 白壁に宿るオペラ
壇ノ浦 平家一門 落ち武者伝説今もなお 
*緑の風にマンジュシャゲ
長門路はるかに俵山
白猿伝説 湯の香り
水素の効能
ああ〜
角島灯台へのつづら折り
鹿の親子が草を食(は)む
(1)
緑の風にさそわれて
赤く咲くのはマンジュシャゲ
長門路(ながとじ)はるかに湯のけむり
ここは白猿(はくえん)伝説 俵山
九十九折り(つづらおり)をたどれば
そこは日本海
角島灯台に
鹿の親子が草を食(は)む
(1)
俵山から緑の風が吹いてくる
青い空には彼岸花
ふたりの声が
ここは長州 
  「柿の木の下で」